映画「手紙は憶えている」感想

手紙は憶えている 95分 

 

あらすじ(公式サイトより引用)

最愛の妻ルースが死んだ。だが、90歳のゼヴはそれすら覚えていられない程、もの忘れがひどくなった。ある日彼は友人のマックスから1通の手紙を託される。「覚えているか?ルース亡きあと誓ったことを。君が忘れても大丈夫なように、全てを手紙に書いた。その約束を果たしてほしい―」2人はアウシュヴィッツ収容所の生存者で、70年前に大切な家族をナチスの兵士に殺されていた。そしてその兵士は身分を偽り、今も生きているという。犯人の名は“ルディ・コランダー”。容疑者は4名まで絞り込まれていた。体が不自由なマックスに代わり、ゼヴはたった1人での復讐を決意し、託された手紙と、かすかな記憶だけを頼りに旅立つ。だが、彼を待ち受けていたのは人生を覆すほどの衝撃の真実だった――

 

 

※ネタバレ含みます!!

 

 

 

予告編をみて、すぐに結末が分かってしまうけれど、きっと大切なのは違うところなんだと思った。

だからサスペンスと謳われていても、ファンタジーに近いような印象。

認知症」というカーテンに引かれて、隠されてしまった「真実」は果たして「手紙」通りのものだろうか? 

眠りにつき、毎朝目が覚めるたびにスタート地点が同じになる老人が旅をする様子は非常に物語的に映りました。

この映画は、旅自体が手紙であるわけですが、観客には旅の過程が分かるのに、本当に旅を、そして復讐を必要としている、体の不自由なマックスだけが、手紙と同じように起こった出来事を想像するしかないのは、より復讐の空虚さを私たちに印象付けるような気さえします。

それは戦争特有のものかもしれません。

 

はたして、認知症になる前のゼヴは一体、どんな人だったのでしょうか?

ナチを崇拝したままだったのか、過去の過ちを悔いていたのか、いつ捕まるかビクビクしながら暮らしていたのか。

4人のコランダーはある意味、4人のゼヴなのかもしれません。

(同性愛者の方は正直でいて捕まったのか、それとも運悪くなのかは憶測するしかありませんが、展開的に後者かもしれませんね。これはドイツ人でも同性愛者は収容所に送られていたという歴史的背景を観客に伝えたかったのでしょう)

だからこそ、「思い出した」というラストがあるのではないかと思いました。ゼヴが最後のルディと対峙した時、認知症になる前の自分をきっとルディ越しに見たはずです。

人生の半分以上を本名も素姓も隠して偽ってきた2人。

ゼヴは認知症になって、嘘が真として堅固になったような気がしますが、やはりそれもゼヴではないのです。あくまでゼヴと名乗る第三者なのです。

マックス、ゼヴ、ルディ。

それぞれが自分を取り戻すために必要な手段は残酷な手段でした。

しかし、それぞれが一瞬自分を取り戻したとき、何を感じただろうか?

と、過去から現在と、正当化できない行為をした三人について、思いを馳せました。

 

 

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